Hello mate!
今回は好きなサッカーの話題をば。日本にいた時はよく友達とJリーグを観に行っていました。今でもネットで結果やハイライトをチェックしています。
もちろん、今はオーストラリアにいるということで、Aリーグの試合を徐々にフォローし始めているところです。
さて、ワールドカップ最終予選が佳境になってきましたが、8月末に日本代表対オーストラリア代表の試合が行われます。友人によると日本ではチケットが入手困難だとか。実力が伯仲しているチーム同士、好ゲームが予想されます。
そんな中、地元の図書館でオーストラリア代表監督 Ange Postecoglou(アンジ ポステコグルー)氏が出版した自伝(題:Changing the Game 出版:2016)を見つけました。
来る試合を楽しく観るためにもと読んでみましたが、ポステコグルー監督の幼少時の体験など身近に感じる事柄やサッカーに対する視点や価値観などが盛り込まれて面白く読める本でした。日本のサッカーファンの間でも「ライバル」オーストラリアの監督がどういう人かはあまり知られていない気がします。残念ながら、この本も和訳はされていないと思います。(調べたらアマゾンに原書はあります)
監督の人となりやマネジメントの手法が伺える是非日本のサッカーファンにも知ってもらいたい内容の一冊でしたので、今回は感想を書いてみたいと思います。
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移民としてオーストラリアへ
ポステコグルーという名前からもわかるようにギリシャ系です。
メルボルンの多くのギリシャ系の人たちがそうであるように、ポステコグルー一家も1960年代に移住してきました。最初に住んだのはPrahran(パラン)だったとのことで、この地域は当時ギリシャ系の人たちが多い地域でした。(今ではトレンディな街ですが、古い町並みの面影が残っています)
お父さんは家具職人だったそうで、手に職ある人でしたが移住当初は苦労したとあります。間借りしていたお家から、歩いて中古のベッドを貰い受けに行ったは良いものの、車もなく道もわからず。しかも言葉(英語)もわからないので道を訊くこともできなかったというエピソードが語られています。
移住当初の苦労もあってか、家庭内の雰囲気はあまり良くなくて特に姉とお父さんは口喧嘩が耐えなかったそうです。そんなお父さんが熱中していたのがサッカーでした。ポステコグルー氏が子どもの時にサッカーをプレイし続けた理由は「父を喜ばせたい」という気持ちからでした。
ご存知のようにオーストラリア、特にメルボルンでの花形スポーツといえば「オージールール フットボール」です。周りの子供達や、オーストラリア文化に同化しようとするギリシャ系の人たちも含めて、オージールールに熱中していく生徒たちが多いなかでポステコグルー氏は「父親との絆」のためサッカーを続けたといいます。
また、子どもながらポステコグルー氏は父親と仲間の「サッカー談義」にも加わって話をしていたそうで、そこでサッカーの理論を鍛えたのかPrahran High Schoolではサッカーの知識がない顧問の音楽科の先生にかわって実質的なコーチとしてクラブををまとめていたとか。
上記の内容が幼少期について書かれたチャプターで印象に残った箇所でした。
移民としてやってきて、母語が違うなかでがんばってきたという話を聞いてなんだか身につまされる気になります。というのも当時は今よりさらに厳しい面があったと思うからです。
実は、ぼくの義理のおばあちゃんもポステコグルー一家と同じようにPrahranに60年代ごろにギリシャから移住してきた人でした。ポステコグルー氏の本をよむ前に当時の話を聞かされたことがありました。船でメルボルンに来るまで30日もかかったという話や、Prahranでの出来事など本で紹介されていた内容と重なる部分が多くあり、ポステコグルー一家の描写に親近感を得ました。
ポステコグルーの指導法や組織マネジメント法
3年半親友と口を聞かず
上記のように子どもの頃からコーチ活動を始めていたポステコグルー氏ですが、プロの監督になったのはSouth Melbourneの監督になった時でした。その時にチームにはPaul Trimboliという選手が在籍していました。この選手は元々、ポステコグルー氏とは無二の親友で文字通り隣に住み、息子の名付け親でもあった人ですが、監督として在籍していた3年半の間、友人としての縁を一切断ったそうです。
「コーチと選手の距離感は必要」「選手を公平に扱う」というポリシーのためで、友人のPaulという人もそれを理解したそうですがかなりルールに厳格な人だということが著作からわかります。
レジェンドを切る
また、文中にはレジェンドプレイヤーとして長らくオーストラリア代表を支えていた主将ニールに「ワールドカップには連れて行かない」と電話で告げた時のエピソードも書かれていました。
2006年のドイツワールドカップでベスト16に進出し「黄金世代」と呼ばれた選手たちが、ポステコグルーがオーストラリア代表に就任した2013年当時も多く不動のレギュラーとして残っており、世代交代が必要とされている時期でした。ニールも黄金世代の一員として所属クラブでの出場機会がないにもかかわらず過去の実績から選ばれ続けている選手でした。
そんな中、ポステコグルーは「ワールドカップまで仕上げる」と主張するニール選手に毅然とメンバー外になると告げたそうです。
ルーカス ニール選手は大宮アルディージャでプレイした経験もある選手で2000年代まで英国で活躍したDFでした。長年の功労者で、アンタッチャブルな存在でしたがそういう人物に引導を渡し、世代交代の始まりになったとか。
原理原則を大事にするマネジメント
原理原則を大事にするタイプのマネージャーだということが著作を通して伝わってきました。
2014年のワールドカップでは若い選手をたくさん登用しましたが、パフォーマンスが落ちると調子の良い選手にすぐ交代させています。
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例えば2015年のアジアカップで大活躍だったマッシモ ルオンゴ選手も最近はスタメンではなく途中交代が多いですし、かわりに英国で活躍しているアーロン ムーイ選手のスタメン起用が多くなっています。自らが発掘して育てた選手でも調子が悪いと容赦なく外しています。
また、選手とのなれあいもしないというスタンスで、選手たちが外食やパーティーをしていても、ポステコグルー氏はホテルで一人で夕食を取るそうです。
パスをつなぐ戦術を重視
Aリーグを観て感じたことですが、オーストラリアのサッカーはどちらかというと前へ向かって大きく蹴っていく傾向があります。それはこの自伝にも書かれていました。
一方、Jリーグはなるべくミスをしないでパスを繋いでいくスタイル。バックパスをして攻めどころを探り直すこともよくありますし、神経と頭を使ったサッカーのように思います。
ひるがえってオージーは、リスクはあるかもしれないけれどとにかく蹴ってみる。ちょっと雑なのではと思うこともありますが良くも悪くも前向き。なので、ロングパスを蹴って出たとこ勝負のような場面も日本よりは目立ちます。
ポステコグルー氏はオーストラリアらしいロングパスではなく、短いパスをつなぐスタイルで売り出した指導者でした。ブリスベンの監督をしていた時、2011年グランドファイナル(優勝決定戦)にて0−2から延長後半のロスタイムで追いついてPKで優勝した試合は語り草になっているそうです。この時も、リードされていながらGKはロングボールを蹴らずに低いところからボールを繋いでいます。とてつもない徹底ぶりといえます。
まとめ
サッカーファンとして、オーストラリアが日本との試合でどういう作戦でくるかなど興味はつきませんが、ポステコグルー氏の自伝を読んでさらにさらに楽しみが増えました。
著作中には、サッカーがヨーロッパほどの人気にはなっていないオーストラリアで他のスポーツと同じようにどう強化していくかなどの思いも描かれていました。
「オーストラリアでは海外の指導者がありがたがられるが、国内の指導者が育ってくるべきだ」という趣旨のことが書かれていました。日本の岡田武史監督も日本の指導者について同じようなことを言っていた記憶があります。
ポステコグルー氏は次のワールドカップで代表監督は勇退し、ヨーロッパで指導者になることを希望していると著作やメディアにて書かれています。
本の最後はこうした文章で締められています。
父親にくっついていたギリシャ移民の少年はオーストラリアのサッカーをより良いものに変えていくことに自分の居場所をみつけた。
題名の「Changing the Game」の意味はオーストラリアのサッカーをより良いものにしていくという思いが込められているのでしょう。単なるサッカー談義にとどまらず、マネジメントやプロ意識などの勉強になる一冊でした。
追記 マリノスの監督として日本へ
ポステコグルー氏がマリノスの監督として日本でキャリアを重ねる事になりました。
上記にも書きましたが、ポステコグルー氏の自伝からわかる「監督像」としては
- 原理原則型で規律重視
- 選手とは近すぎない距離を持つ
- 監督としての威厳を大事にする
- リードされていてもGKからつなぐのを徹底させる
- 功労者であろうとパフォーマンスが落ちれば外す
といった面が浮かびます。間違いなく真面目なタイプの選手が好みだと思います。
どういったチームづくりをするのか、楽しみです。
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